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船にブレーキはありません。では止まるときはどうするのかというと、プロペラを逆回転させる必要があります。(可変ピッチプロペラの場合はプロペラピッチをマイナス側へ変えます)
しかし、プロペラを急に逆回転させるとエンジンに負荷がかかるため、燃料の送り込みを停止してしばらく遊ばせたあと、回転数が落ちてきたところで逆回転させます。そんなことをしているうちに、大型船だと2km、3kmも進んでしまいます。船は急には止まれないのです。

衝突回避はプロペラ逆回転か、旋回か

広い海を高速で走る船の場合、衝突を回避するにはプロペラ逆回転で停止するよりも旋回するほうが有利になります。

プロペラ逆回転による停止距離は長く、かつ蛇行する

舵を切っておらず直進状態でプロペラ逆回転をしても、右回りプロペラの場合、船が左舷方向に蛇行してしまう傾向があります。
また、プロペラ逆回転のほうが停止までの距離が非常に長く、結果進路を大きく外れてしまうことになるのです。

アドバンスとトランスファー

プロペラ逆回転にて停止することを「後進全力停止」または「危急停止ききゅうていし」(英語ではCrash-Stop)といいます。一方、旋回のほうは英語でTuringまたはHard Port Turningなどといいいます。

それぞれ操作をしてから横に進む距離をトランスファー(Transffer)、前方に進む距離をアドバンス(Advance)と呼びます。

では実際の航跡を見てみましょう。

船が16ノット(約30km/h)程度で走っていたとすると、旋回した場合はトランスファーが約900m、アドバンスが約900mでおさまっています。一方、後進全力停止の場合は、トランスファーが約2.2km、アドバンスが約2.8kmにも達してしまっています。明らかに、後進全力停止のほうが進路を大きく外れてしまうことがわかりますね。
(ただし、浅い海や狭い領域などの制限水路においては旋回ができない場合があるので、そのときの操作方法を十分に検討することが重要です。)

これらの航跡は船の形や大きさによっても変わってくるため、造船所では引き渡し前に必ず試運転に出て、後進試験や旋回試験などを実際の海で行います。

低速状態ならば後進全力停止が有利

上の船の場合の、船の速度とアドバンスの関係を表したグラフがあります。これによると、約6ノット以下では旋回よりも後進全力のほうがアドバンスが小さくなっています。すなわちこの船の場合は6ノット以下ではプロペラ逆回転をしたほうが早いということがわかります。

 
おまけ
~錨をおろすのは危険な最終手段~

よく船を止めるのに錨を下せばいいのでは?という意見を聞きますが、これは最終手段です。なかなかスピードがおさまらない船にとって急ブレーキをかけることは不可能であり、錨を下ろしたところでチェーンが引きちぎれたり、片方の錨だけ効いて船が回ってしまったり、全く効かなかったりすることがあります。危険なので、錨に頼るのは最後の最後ということになります。

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