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『…まだ、だれも見たことがない地球のマントル。挑むのは、10000メートル先の地底だ…』

月に行くことや、深海にもぐることはできても、地球の内部に行くことはできません。しかし、私たちは地球内部の物質を取ってくることはできるのです。船から海底まで伸ばした長い長いパイプで海底を掘り、岩盤や地層を掘りぬいて船上に持ち帰り、研究する、それが地球深部探査船 ”ちきゅう” の役割です。

”ちきゅう”についてやさしくかつ詳しく書かれた面白い児童書を紹介します。

『深く、深く掘りすすめ!〈ちきゅう〉世界にほこる地球深部探査船の秘密』(くもん出版)
作者:山本省三
絵:友永たろ
(定価1,400円+税)

地球を掘る船、”ちきゅう”

地震・火山のしくみや海底資源のことを知るためには、地球の内部を知る必要があります。地球内部の物質を取ってきて研究するのです。そのためには、地上で地面を掘り進めるよりも、海底から掘り進めるほうが早く地球内部に達することができます。そこで活躍するのが、地球深部探査船 ”ちきゅう” です。

ちきゅうから長いパイプをおろし、先端につけたドリルで海底を掘っていきます。採取した地球資源は ”コア” と呼ばれ、研究材料となります。コアを見れば地球の変化の歴史を知ることができます。

掘ってきた岩盤・地層で何がわかるのか

1.地震の原因

地震は海底のプレートが動くことによって起きるといわれています。このプレートは「海嶺(かいれい)」と呼ばれる海底火山から年々新しく生まれ、海底の深い溝である「海溝」に沈み込んでいきます。プレートの状態を調べることで、地震の原因となる動きを探ることができるのです。

2.地球の進化の歴史

地球は昔から今まで絶えず変化を続けています。地震が起きたり、火山が噴火したり、海が蒸発したり、雨が地にしみこんだり・・・コアを調べることで地球の物質の移り変わりの歴史を知ることができます。

3.生命の進化の歴史

光が届かない真っ暗な深海にも生物がいます。これらの生物は地上とはまったく異なる生き方をしていることが多く、まだまだ未知の世界です。とくに海底下の微生物の研究をすることで、海から陸へあがった生命の進化の歴史や、生命の環境適応力、また、医療に応用できる科学がないかなどの解明につながります。

読みどころ

上で書いたような内容に加えて、”ちきゅう”の構造から、技術者たちの努力、地球のメカニズムまで、幅広く触れられています。
特に印象に残ったのは、

・”ちきゅう”が海のど真ん中でも流されずに一点にとどまっている(定点保持する)ために、6つものプロペラがついていること
・海底下では微生物は細胞分裂のスピードが10年に1度や1000年に1度などのレベルで、生きているか死んでいるか確認がむずかしいこと
・海底プレートどうしが沈み込む部分にも摩擦熱が発生すること

などです。どれも技術者たちのアイデアや試行錯誤があって開発・解明されてきたことばかりです。

大人にとっても読みやすく面白い児童書

こちらの本は小学校高学年~の児童に適した児童書で、難しい漢字にはすべてフリガナが振ってあり、字も小さすぎず合間合間にカワイイ挿絵や写真も盛り込まれており、大変読みやすく作られています。それなのに内容は濃く、”ちきゅう”の構造や、海底の岩盤や地層の具体的な掘りかたなどが詳しく書かれています。

大人にとっても読みやすく、勉強になる、面白い本です。(一気に読んでしまいます!)地球の動きや地震のしくみを知りたい方や、海洋開発・海底資源の仕事に就きたい方などにもオススメです。

(おまけ)
作者の山本省三さんは、娘さんの小学校のPTAでJAMSTEC(海洋研究開発機構)にお勤めの技術者の方と出会い、この児童書を出版するに至ったそうです。人との出会いを大切にし、このような素敵な本が出来上がったのですね。

あわせて読みたい!

同じ作者による、こちらの児童書→『すごいぞ!「しんかい6500」地球の中の宇宙、深海を探る』もオススメです!

『すごいぞ!「しんかい6500」地球の中の宇宙、深海を探る』

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