船の排ガスには人体に有害な硫黄酸化物SOxが含まれることについてはこちらの記事『船の排ガス規制と対策、NOx、SOxとは?』で書きました。
以下では、排ガスからSOxを除去する装置であるスクラバーの仕組みについて説明します。
※排ガスからNOxを除去することは脱硝と呼ばれますが、SOxを除去することは脱硫と呼ばれます。
SOxスクラバーの仕組み
SOxスクラバーには、水を使用する湿式タイプと水を使用しない乾式タイプがありますが、船の場合、湿式タイプのほうが一般的です。
水に溶けて酸性雨の原因となってしまうSOxですが、逆に水に溶けやすい性質を利用して除去することができます。
湿式スクラバーにはオープンループ式とクローズドループ式とそれらを組み合わせたハイブリッド式の3種類があります。
1.湿式スクラバー(オープンループ式)
オープンループ(Open loop)式の湿式スクラバーでは、海水を使用します。
その特徴から、船に搭載されるスクラバーとしてはこのオープンループ式が主流となっています。
まず、エンジンからSOxを含んだ排ガスが出ます。そこへ海水を噴射させます。SOxは水に溶けやすく、溶けると強い酸性である硫酸(H2SO4)になりますが、海水中のアルカリ(炭酸塩など)によって中和され、水と硫酸塩に変化します。
この硫酸塩は海水に自然に含まれるものなのでそのまま放出しても海洋環境に害はありません。湿式スクラバー(オープンループ式)ではスラッジ処理(不純物除去)が省略されることもありますが、いずれにせよ排水は規制にしたがって放出直前にしっかりと監視されます。
2.湿式スクラバー(クローズドループ式)
クローズドループ(Closed loop)式の湿式スクラバーでは、清水(真水)を使用します。
まず、エンジンからSOxを含んだ排ガスが出ます。そこへ清水を噴射させます。SOxは水に溶けやすく、溶けると強い酸性である硫酸(H2SO4)になります。不純物などをスラッジ処理したあと、アルカリ剤である水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて中和させると、水と硫酸塩に変化します。
中和された水は再度スクラバーへ戻され、再利用されます。ぐるぐる循環させるため、不純物や硫酸塩を除去するスラッジ処理が必要となります。
3.湿式スクラバー(ハイブリッド式)
ハイブリッド式の湿式スクラバーは、オープンループ式とクローズドループ式の両方を組み合わせた形となります。沿岸部などの排水基準が厳しい海域においてはクローズドループ式で運用し、太平洋のど真ん中など沿岸部から離れた海域ではオープンループ式で運用する、というふうに効率よく切り替えることができます。
4.乾式スクラバー
乾式スクラバーでは、排ガス処理に水を使用しません。脱硫剤と呼ばれる物質(酸化鉄や活性炭など)に排気を通して、排気中のSOxを吸着させることで除去します。
エンジンから出た排ガスを、脱硫剤に通します。脱硫剤は粒子がギュッと詰まって板のようになったもので(多孔板といいます)、排ガスがその隙間を通りぬけるとSOxが吸着除去される仕組みとなっています。
→SCRシステムについてはこちら『船の排ガスNOxを減らす設備、SCRとEGRの仕組み』
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環境への配慮が高い沿岸部では処理したあとの水であっても排水が禁止されている海域があるため、どのタイプのスクラバーを搭載するかは船の航路・寄港国・コスト管理・船の大きさなど様々な要因から決めることになります。
roop→loop 辞書で調べた後に書きなさい。
この2文は矛盾する。放出の有害性を理解していない?
この硫酸塩は海水に自然に含まれるものなのでそのまま放出しても環境に害はありません。
※ただし排水はきちんと監視され、適切な状態でないと海へ排出してはいけないことになっています
恥ずかしいスペルミスでした。修正致しました。ご指摘ありがとうございます。
また2文に関しても矛盾した表現になっており申し訳ございません。オープンループで生成される生成物が海洋環境に無害なのは事実ですが、きちんと洗浄性能が保たれているかの確認は必要で、排水を船から環境へ放出する前には必ず監視される、ということが伝えたかったことです。
ご意見いただき、誠にありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します。