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クルーズ客船の概要

cruise ship

日本の法律(船舶安全法)では13人以上の人員を運ぶ船を広く「旅客船」と定義していますが、陸と陸を行き来するのが目的の一般的な旅客船とは違って、「クルーズ客船」と呼ばれる船はいわば海の上のリゾートホテルです。ゆっくりと景色を見ながら宿泊したり、アクティビティや娯楽施設、お食事を楽しんだりするのが一番の目的となります。そのため、船内にはいくつものレストラン、プール、バー、ストアなどが設けられています。劇場や映画館、美容院、写真スタジオもあり、長期の旅ではお稽古ごとも用意されていて、飽きない工夫が凝らされています。

陸に到着したら船を降りて外国を観光をすることもできますが、一度も降りずにひたすら船内を楽しむ人も多いです。

クルーズ客船というと、「世界一周」「お金持ちの人しか乗れない」「お年寄りが多い」ようなイメージがあるかもしれませんが、最近はそうではありません。2、3日~1週間程度の割安パックも多く、部屋のタイプによっては普通のホテルに泊まるくらいの料金で船内のお食事やアクティビティまで楽しめます。また、欧米では休暇が長いため、家族連れで気軽に利用する若い層も見られます。

もちろんゴージャスに楽しみたい方はそれなりの料金を払えばスイートルームに泊まれるので別格の旅になるでしょう。クルーズ客船のお部屋のタイプについてはこちらの記事をご参照ください。→『豪華クルーズ客船~どんな部屋がある?』

クルーズ客船の構造と動力

クルーズ客船は船体が大きいのでとにかく軽く仕上げるため、比較的薄板の鉄板で作られています。強度を保つために船底あたりの構造は細かい区切りがたくさん入れられており、溶接者泣かせの区画となっています。また、船の上のほうはアルミ材を使用して軽量化を図っているケースもあります。
つぎにデッキとゾーンの話をします。

デッキ

ご覧の通り、クルーズ客船にはデッキ(Deck, 階層)がたくさんあります。大きな船だと18デッキほどあるので、高層の、それも横に長い巨大ビルが移動するようなものです。

デッキは船底から順にDeck 0, 1, 2, ・・・と数えていきます。通常0デッキにはエンジンや発電機などの機器類が据え付けられており、1~3デッキあたりまではクルー(従業員)の宿泊部屋や食糧庫、ギャレー(厨房)、洗濯ルームなどがあります。
乗客が自由に行き来できるのはその上のデッキからとなります。

※ただし、上のデッキにも従業員専用のエリアはあります。従業員専用プールや専用バーなどが各所にあり、乗客と接することなく息抜きできるようになっています。また、船長をはじめとする操舵に関わるクルーの部屋は操舵室のある上部デッキに作られているため、そのエリアも乗客は入れないように扉で仕切られています。

なお、多くのクルーズ客船において13デッキは存在しません。「13」という数字は西洋において最も不吉な数字とされているからです。(※理由は諸説あり)したがって、12デッキの次は14デッキとなります。
デッキだけでなく客室番号においても、13はスキップされているケースが多いと思います。

ゾーン

クルーズ客船は乗客をたくさん乗せるため、厳しい防火対策が求められます。長い船体をいくつかの“Fire Zone”(ファイアーゾーン、防火区画)に区切られ、船首から順にZone1, Zone2, … と定義されます。万が一火災が発生してもこのゾーン内で食い止められるように、様々な工夫がなされています。
※防火対策についてはまた別記事で書こうと思います。

クルーズ客船の動力

通常の貨物船などがディーゼルエンジンで直接プロペラを回すのに対し、クルーズ客船ではポッド型プロペラを使った電気推進になります。

クルーズ客船では、
・船内で快適に過ごすために振動や騒音が極力少ないこと
・大きな船体を岸にぶつけることなく安全に着岸させるために正確で細かい操縦ができること
が求められます。そのため、振動や騒音の少ない電気推進、360度回転可能で細かな操縦ができるポッド型プロペラが使われやすいわけです。

※電気推進のための発電には結局ディーゼルエンジンが使われるのですが、ディーゼルエンジンがプロペラ軸を直接回す構造よりは、いったん電気に変えてモーターを動かすほうが振動・騒音を抑えることができます。
→くわしくはこちら:
電気推進について 『船を動かす力!さまざまなエンジンの種類と特徴』
ポッド型プロペラについて 『船はどうやって進む?現在のプロペラに至るまでのあゆみ』

2021年 世界最大のクルーズ船「シンフォニーオブザシーズ」

2021年1月現在で世界最大のクルーズ客船は、ロイヤルカリビアンクルーズ社の「シンフォニーオブザシーズ(Symphony of the Seas)」で、全長362m、幅65m、総トン数22万8081もの大きさがあります。

最大18デッキまであり、クルーエリアは2デッキまでなので、乗客には3~18デッキまでの15デッキ分ものエリアが確保されています。(上で記載したように、この船にも13デッキはありません)
レストランは22か所、プールは4つあり、最大6680人の乗客が宿泊できます!

この船がとにかくすごいのは、船の中央がくりぬかれていることです。よくこのような構造物が造れるなと、ただただ驚きです。海の上に浮かんでいることを忘れてしまいそうです。

ロイヤルカリビアンのホームページにて、「Symphony of the Seas」のバーチャルツアーをすることができます。まるで船内を歩いているかのような体験ができますよ。(↓画像のリンク先ページの下の方にあります)

クルーズ客船を造る世界の主な造船所

このような大きなクルーズ客船はどこで作られているのでしょうか?
クルーズ客船の建造で有名な造船所は次のとおりです。

  • イタリア フィンカンチェリ
  • ドイツ マイヤーヴェルフト
  • フィンランド/フランス STXヨーロッパ

ヨーロッパはクルーズ客船の歴史が長く、家具や装飾、船装品などのメーカーが数多く揃っているため、クルーズ客船を建造するうえで強い環境にあるといえます。アジアが新規参戦しようにも、まずこれらの客船特有のメーカーが国内に少ないため不利な状況になりがちで、課題はまだまだ多そうです。

以上、クルーズ客船についてはコンテンツが豊富なため、別記事で少しずつ触れていこうと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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