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船内でシャワーを浴びた排水、お皿を洗った排水、トイレの排水、、こういった汚れた水は船内でどう処理されているのでしょうか。

まず排水はBlack Water(ブラックウォーター, 下水)Grey Water(グレーウォーター, 生活排水)の2種類に分けられます。

Black Water 下水

  • トイレの排水
  • 船内病院からの排水

Grey Water 生活排水

  • 洗面所や台所のシンクからの排水
  • シャワーの排水
  • 洗濯の排水

Black Water 下水

下水については船内で汚水処理をして、きれいになった水は海へ放出し、固体となった汚物は港についたときに回収してもらいます。
処理の方法としては、紫外線消毒や塩素消毒、逆浸透膜フィルターなどいろいろありますが、1つに絞らず組み合わせたりもします。なかでも「メンブレンバイオリアクター(Membrane Bio Reactor)」は人気があります。バイオテクノロジーの一つで、微生物が有機物をエサとして、二酸化炭素(またはメタンガス)と水に分解してくれるのです。そうして綺麗になったうわずみ部分の水を濾過したり塩素消毒したりして、海へ戻します。

Black Waterは有毒な細菌が含まれることが多いため、きちんと処理することが国際ルールで定められています。
MARPOL(マルポール)条約といい、船舶による海洋汚染を防止する目的で作られている条約があります。

MARPOL条約 附属書Ⅳ(4)より
・総トン数400以上の新造船
・総トン数400未満であるが最大積載人員が15人を超える新造船
・総トン数400以上の従来船で、2008年9月以降運航している船
・総トン数400未満の従来船で、2008年9月以降運航しており、最大積載人員が15人を超える船
にあてはまる国際船は、

・承認された汚水処理プラント または
・汚水の粉砕および消毒装置 または
・じゅうぶんなサイズの汚水の貯留タンク
を搭載し、

・決められた方法で処理した排水 ⇒ 一番近い岸から3海里(約5.6km)離れていれば海に放出してよい
・決められた方法で処理していない排水 ⇒ 一番近い岸から12海里(約22.2km)離れていれば海に放出してよい

ただし
※未処理の排水を放出するときはタンク内を一度に放出してはならず、4ノット以上の速度で航行しながら排出すること
※国・港によって放出禁止などの独自ルールもあるため注意が必要

12海里(約22.2km)離れてさえいれば、処理しきったとはいえない下水も垂れ流しOKなのですね。とはいえ通常大型船には汚水処理プラントが搭載されているので、そのまま垂れ流すケースは少ないと思います。

Grey Water 生活排水

Grey Waterに関してはMARPOL条約では取決めはないため、基本的に海に垂れ流しOKです。ただし、これも国や港によっては独自ルールがある場合があります。
処理しない、ということは、料理や掃除、洗濯で使用した洗剤はそのまま海に流れていくということなので、船側では一応環境に配慮した洗剤等を使用していることが多いです。また、商船と違って人がたくさん乗る大型客船などではGrey WaterもBlack Waterのようにある程度処理する船もあります。
それにしても、油やシャンプーなどが海に・・・と考えると、あまり気持ちのよいものではありませんね。そのうちGrey Waterが規制される日も来ると思います。

たいせつな私たちの地球。その7割以上を占める海をきれいな状態で守っていきましょう。

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8 Thoughts on “船の汚水(下水)はどう処理している?”

  • コロナウイルスが問題となっています
    魚などに影響があるのかないのか
    さらに 海水浴も気持ち悪いですね

    • コメントありがとうございます。コロナウイルス、なかなか収束しそうになくて不安になりますね。ウイルスが含まれると言われるトイレ汚水はきちんと分解・殺菌処理した上で海に放出しているのでそこまで心配ないかと思います。生活排水のほうももちろん無害ではないですがウイルス濃度が高いわけではないですし、何キロも離れた海で放出するのでプランクトンが自然のサイクルで分解してくれるのではないでしょうか。なお、陸地でも下水道が完備されていない地域などでは生活雑排水はそのまま垂れ流しになっており、そちらのほうが放出が陸に近く水の動きも悪いため個人的には気になります。。

  • 船会社によっては汚水を船内で浄化した後も海へは放流せずに船底のタンクに溜めておき、着岸後に船が所属する自治体の陸地の下水道に流すところもあります(特に阪神東九州航路の各事業者[阪九フェリー、名門大洋フェリー、さんふらわあ九州航路など]※これは航路の特性上、瀬戸内海上及び発着地[九州東部各港(新門司、別府、大分、宮崎など)や、阪神エリアの各港(神戸六甲、大阪南港、泉大津など)]の海上の汚水排出が殆どできない為による)。従って航路や港によっては海上排出が全く許されないが故に列車やバスのトイレ同様に陸上による下水道処理による所もあります。

    • コメントありがとうございます。やはり港や海域によって定められた独自ルールはありますよね。陸の下水道で処理するのは内航船に多そうですね?また情報共有していただけたらありがたく思います。

  • 岩田某の動画を流した事件で後に検疫のトップが細かいやりとりを説明していた中で、
    (ニュアンスだけ)引用:隔離の本部は本来は陸地につくるのだが、この船(ダイアモンドプリンセス号)は1日に1回沖に行く必要があり船の中に本部を作る必要があった云々。 :引用終
    この沖に行く必要って多分これですよね。3500人分のシャワーやら洗濯水やら食事の排水やら・・・
    ゾーニングも大変だったろうと思いますね。動線全てが狭い廊下、廊下は食事の搬入・客室からのごみや洗濯物の回収・その他クルーが立ち入るたびに、客がドアを開けるたびにレッドゾーンになり、消毒をその都度するという事になりますね。 本当に大変だったと思いますね。

  • 羽田空港の側にある釣り船の船着き場にあるトイレは、便器の下は、川になっており、そのまま垂れ流しです。河川の水質汚染になっていますので、調べて下さい。

  • マルポール条約ができたのは1978年らしいから、タイタニックのようなそれ以前の船の排水は垂れ流しだったのかもしれませんね。

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